人の身体を回復させる仕事に就きたい、スポーツに関わる仕事がしたい。そうした思いから理学療法士(PT)を目指す方はたくさんいます。ただ、いざ調べはじめると、何年かかるのか、学費はいくらか、国家試験は難しいのか、資格を取ったあとにちゃんと食べていけるのか、気になることが次々に出てくるのではないでしょうか。
この記事では、理学療法士になるまでの道すじを、必要な年数や学費、国家試験の難易度、そして気になる年収まで、公的なデータにもとづいて整理します。そのうえで、資格を取ったあとにどんなキャリアが広がっていくのかを、私たちの現場の様子も交えてお伝えします。読み終えるころには、進路のイメージがはっきりしているはずです。
理学療法士とはどんな仕事?
理学療法士は、病気やケガ、加齢などで身体が思うように動かなくなった方に対して、立つ、歩く、動くといった基本的な動作の回復を支える国家資格です。英語ではPhysical Therapistと書き、略してPTと呼ばれます。
仕事の中心になるのは、身体を動かして回復を促す運動療法、温熱や電気を使う物理療法、そして日常生活の動作を分析して改善を指導すること。関わる相手は、手術後にリハビリが必要な方から、腰や膝に痛みを抱える方、競技への復帰を目指すアスリートまで、幅広くいます。
大切なのは、痛みを取ることだけがゴールではないという点です。その人がもう一度自分らしく動ける状態に戻り、再び痛めない身体をつくるところまでを見すえて関わる。医療、介護、スポーツ、予防と、活躍できる場が年々広がっている職種です。
働く場所も一つではありません。病院や整形外科クリニックのリハビリテーション部門が代表的ですが、介護施設や訪問リハビリ、スポーツチームの現場、健康づくりや予防を目的とした施設など、選択肢は多岐にわたります。どの場所を選ぶかによって、関わる相手も、身につく力も変わってきます。だからこそ、資格を取ることと同じくらい、どこで働くかを考えることが大切になります。
理学療法士になるための3つのステップ

理学療法士になるには、「養成校で学ぶ」「国家試験に合格する」「免許を登録する」という大きく3つのステップに分かれます。特別な近道があるわけではなく、順番にひとつずつクリアしていく必要があります。まずは全体像をつかむために、それぞれのステップを紹介していきます。
養成校で3年以上学ぶ
まず、文部科学大臣と厚生労働大臣が指定した養成校で、決められたカリキュラムを修めます。養成校には四年制の大学、三年制の短期大学、専門学校があります。ここで、解剖学や生理学、運動学といった基礎から、実際の患者さんに関わる臨床実習まで、順を追って学んでいきます。
国家試験に合格する
養成校を卒業する見込みが立つと、理学療法士国家試験の受験資格が得られます。この試験に合格することが、資格取得における一番の関門です。試験は年に一回、例年二月下旬に全国で実施され、マークシート方式で行われます。
免許を登録する
試験に合格したら、厚生労働省に免許を申請して登録します。この登録を済ませて、はじめて理学療法士として働けるようになります。
養成校で学び、国家試験に合格し、免許を登録する。この3つが基本の流れです。
何年かかって、いくらかかる?
進路を考えるうえで、まず気になるのが必要な年数と費用だと思います。
養成校で学ぶ期間は、最短で3年です。三年制の短期大学や専門学校なら3年、四年制の大学では4年をかけて学びます。働きながら目指せる夜間の養成校もあり、その場合は4年制が中心になります。早く現場に出たいか、時間をかけて幅広く学びたいかで、選ぶ年数が変わってきます。
学費は学校の種類によって幅がありますが、一つの目安として、三年制の専門学校でおよそ400万〜500万円、四年制の大学でおよそ500万〜600万円です。これに加えて、教材費や、臨床実習のときの交通費・宿泊費などがかかる場合があります。金額だけを見ると負担は小さくありませんが、奨学金や教育ローン、学校ごとの支援制度など、費用を抑える手立ても用意されています。気になる学校があれば、実習費が学費に含まれているかどうかもあわせて、早めに確認しておくと安心です。
養成校の選び方

理学療法士の養成校には、四年制の大学と、三年制の短期大学・専門学校があります。どちらを選んでも国家試験の受験資格は得られますが、学ぶ年数やカリキュラムの重点、その後の進路には少しずつ違いがあります。多くの方が最初に迷うポイントなので、それぞれの特徴を見ていきましょう。
四年制大学の特徴
四年制大学は、専門科目に加えて幅広い教養も学べます。研究に触れる機会があり、卒業後に大学院へ進む道も開けやすいのが特徴です。時間をかけてじっくり学びたい方に向いています。
短期大学と専門学校の特徴
三年制の短期大学や専門学校は、最短3年で現場に出られます。実践を重視したカリキュラムが多く、早く働きはじめたい方に向いています。
どちらのルートを選んでも、卒業して国家試験に合格すれば同じ理学療法士です。学歴そのものよりも、卒業したあとにどんな現場で経験を積むかのほうが、その後の力の伸びを大きく左右します。この点については、記事の後半でくわしくお伝えします。
なお、理学療法という言葉は少し難しく聞こえますが、英語のPhysical Therapyを訳したものです。Physicalは「身体の」という意味で、身体に働きかけて回復を支える療法を指します。特別な機械よりも、まずセラピスト自身の観察する目と手が仕事の土台になる職種だと言えます。
国家試験は難しい?合格率で見る難易度
医学の内容を学ぶと聞くと、自分にやり切れるだろうかと不安になる方も多いはずです。まずは、気になる難易度を最新の数字で確認してみましょう。
厚生労働省の発表によると、2026年に行われた第61回理学療法士国家試験の合格率は89.7%でした。受験者は12,436人、合格者は11,156人です。近年の合格率は、おおむね80%台後半から90%近くで安定して推移しています。
数字だけを見ると受かりやすそうに思えるかもしれませんが、注目したいのは新卒と既卒の差です。学校を卒業したばかりの新卒者の合格率は95%前後と高い一方で、一度不合格になった既卒者の合格率は60%前後にとどまります。この差からわかるのは、在学中にしっかり学び、卒業と同時に一度で合格することが大きな強みになるということです。
合格の基準は、総得点の六割以上という絶対評価です。誰かと競い合って上位に入る試験ではなく、自分が基準点を超えられるかどうかの試験です。日々の学習を積み重ねていけば、十分に手が届きます。
気になる年収と将来性
資格を取ったあと、どのくらいの収入が見込めるのかも、気になるところでしょう。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、理学療法士などリハビリ専門職の平均年収は、およそ440万円台です。新卒の初任給は月24万円前後が目安で、経験を重ねるにつれて年齢とともに少しずつ上がっていきます。診療報酬という国の制度に支えられているため、景気に左右されにくく、安定して働き続けやすいことが特徴です。高齢化が進むなかで、リハビリそのものの需要も広がっています。
一方で、知っておきたい現実もあります。保険診療から得られる収入は制度で決まっているため、努力や経験を重ねても、給与が大きく跳ね上がりにくいという側面があります。ここは、多くの理学療法士がいずれ向き合うことになる壁です。だからこそ、次にお伝えする「どこで働くか」という選択が、その後の収入とキャリアを大きく左右することになります。
資格を取ったあとに、力の差がつく
理学療法士は、資格を取ってからどんな環境で経験を積むかによって、成長のスピードが変わる職種です。同じ三年目でも、どんな現場で学んできたかによって、患者さんの状態を見立てる力にはっきりと差が出ます。
私たちKROグループは、整形外科クリニックと整骨院、そして予防の事業が連携した、少しめずらしいグループです。この環境が、若い理学療法士にとって学びの場になっています。
医師の診察に同席して、見立てる力を伸ばす
グループ内の整形外科クリニックでは、医師の診察や評価に同席しながら学べる研修があります。画像所見や病態の理解が深まり、診断名だけを見るのではなく、その人自身の状態を見立てる視点が身につきます。整骨院での勤務だけでは触れにくい医学的な知識を、現場で学べる環境です。
スポーツの現場に、勤務時間の中で出られる
中央学院大学や柏日体高校、流通経済大学など、地域のチームとの提携があります。トレーナーの活動を、休みを削るのではなく勤務の一部として経験できる仕組みを整えています。将来スポーツの現場で活躍したい方にとって、現場での対応力を磨ける機会になります。
保険の枠を超えて専門性を活かす
保険診療のリハビリだけでなく、予防のためのトレーニングやインソールの処方、自費の領域まで携わることができます。動ける身体を動けるうちにつくるという予防の視点まで含めて、理学療法士の専門性を発揮できる場が用意されています。
現場で働く先輩の声

ここからは、実際にKROグループで働く理学療法士のスタッフの声を紹介します。どんな思いで入職し、今どんな仕事をしているのか。現場のリアルな声から、働くイメージをふくらませてみてください。
新卒3年目(柏の葉整形外科クリニック)
学生時代からラグビーに打ち込み、アスリートを診たいという思いで入職しました。今は整形外科のリハビリに加えて、提携する社会人バスケットボールチームのトレーナーとしても活動しています。
「理学療法だけでなく、やりたいことを全面的に応援してくれる職場です。夢や目標がある人なら、ここで働きながら自分の道を切り開いていけると思います」
主任(新松戸整形外科リハビリテーションクリニック)
ハンドボール日本代表や東京オリンピックにトレーナーとして帯同した経歴を持ちます。臨床と研究、スポーツの現場を行き来してきた経験を、後輩の育成にも活かしています。
「理学療法士が活躍できる場所はたくさんあります。ただ、可能性があるだけでは何も変わりません。できるようになってから挑戦するのではなく、挑戦するからできるようになる。その気持ちを持った人と、新しいものをつくっていきたいです」
学生のうちにやっておくとよいこと
これから養成校に進む方や、在学中の方に向けて、今のうちにやっておくとよいことをいくつかお伝えします。
一つは、基礎の勉強を後回しにしないことです。解剖学や生理学といった基礎は、地味に見えても現場に出てからの土台になります。卒業が国家試験の合格に直結する職種なので、やるべきことを日々こつこつ続けることが、そのまま将来の力になります。
さらに、可能であれば早いうちから現場に触れてみるとよいでしょう。当グループの理学療法士の一人は、学生時代からラグビーに関わり、母校のトレーナーに頼んでグラウンドに出て、テーピングやリハビリの対応を経験していました。
実際に現場を見ておくと、就職後にどう動けばよいかの見当がつきやすく、学びの吸収も早くなります。授業や実習で学ぶ座学と、現場での実体験の両方があると、仕事の理解がぐっと深まります。
また、自分がどんな分野に関わりたいのかを、少しずつでも考えておくことも大切です。スポーツに関わりたいのか、地域の医療を支えたいのか、高齢の方の生活を支えたいのか。方向性がぼんやりとでも見えていると、養成校選びや就職先選びの軸ができます。
理学療法士に向いている人
先輩たちの話をまとめると、伸びやすいのはこんな方です。人と話し、信頼関係を築くことを大切にできる方。なぜこの痛みが出たのかを考え続けられる方。わからないことを抱え込まず、先輩や仲間に相談しながら動ける方。そして、自分の好きなことや目標に向かって、自分から学んでいける方です。
理学療法士は、資格を取ってからも学び続ける仕事です。だからこそ、学ぶこと自体を楽しめる方にとっては、長くやりがいを感じられる職業だと考えています。
まとめ
KROグループは、「全ての人に、最幸のQOLを」という理念のもとで運営しています。患者さんだけでなく、そこで働くスタッフ自身が長く安心して働ける環境をつくることを大切にしています。
医師の診察に同席して学べる医療連携の研修、勤務時間の中でスポーツの現場に出られるトレーナーの仕組み、週4.5日制で残業の少ない働き方、そして頑張りが給与やキャリアに反映される人事評価の制度を整えています。
これから理学療法士を目指す方も、すでに資格を持って次のステージを探している方も、あなたの挑戦したいという気持ちを私たちは応援します。まずは採用情報をご覧ください。
参考文献
第61回理学療法士国家試験及び作業療法士国家試験の合格発表について|厚生労働省
賃金構造基本統計調査|厚生労働省
専修学校各種学校調査統計資料|文部科学省・都道府県調査
※本記事の国家試験のデータは、記事作成時点で公表されている最新の情報(第61回、2026年)にもとづいています。学費・年収は目安であり、最新の受験要件や日程とあわせて、厚生労働省・文部科学省および各養成校の公式情報をご確認ください。